ヒト型ロボット
2009年3月18日(水)着手
2009年3月21日(土)編集
2009年3月22日(日)完了

 こんなニュースが目に止まった。

ヒト型ロボット:表情豊か、女性ロボ ファッションショーにも産総研

 人間らしい動作や対話ができるヒト型ロボットを、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)が16日公表した。20歳代女性の体格と顔立ちを備え、喜怒哀楽の表情を作れる。方向転換などの二足歩行も可能で、23日開幕する第8回「東京発 日本ファッション・ウィーク」でデビューする予定だ。

 ロボットは身長158センチ、体重43キロ。産総研が開発してきた二足歩行や音声認識などの技術を結集した。顔や首に計42個の小型モーターを取り付け、人間らしい仕草や表情を出せる。デモンストレーションでは自己紹介の後、司会者の声に応えてほほ笑んだり、腰に手を当ててにらむ表情などを披露した。

 開発費は約2億円。実用化して1体2000万円程度に価格を下げることを目指す。開発を担当した梶田秀司・ヒューマノイド研究グループ長は「実際に事業として成立するモデルを確立したい」と話す。【石塚孝志】毎日新聞 2009年3月17日 東京朝刊

 「ついにここまで来たか」という感じだ。正直言って私が考えていたよりもはるかに開発が速い。記事中に〈実用化して1体2000万円程度に価格を下げることを目指す。〉とあるが、ここ数年の進歩を見ていると、その程度のことはおそらくあと数年で達成してしまうだろう。へたすれば、あと10年もたたないうちに一家に1台(ところでロボットを数える際の単位は何だろう)「ヒト型ロボット」ということにもなりかねない……。

 メディアの論調や周囲の人たちの反応を見る限り、ほとんどの人たちが「ヒト型ロボット技術」の目覚ましい進歩を歓迎しているようだ。
 世の中に、ロボットが嫌いな男の子はほとんどいない。私も子どもの頃、ロボットが出てくる漫画やSF小説に夢中になったことを覚えている。「鉄腕アトムのようなロボットが本当にいたらどんなに素敵だろう。もし出会ったとしたら絶対に友だちになるんだ」などと真剣に考えたりもしたものだ。それから約40年、ただの夢物語がまもなく現実になろうとしている。そう考えるとこのニュースは、私にとっても喜ばしいニュースのはずである。

 確かに、「わくわくしないか?」と問われれば、「ちょっとね」くらいには答えるだろう。だが本当のところ私は、「ヒト型ロボット」の開発には大反対である。それは開発の方向性が間違っていると思うからだ。私は、ロボット技術の進歩自体は否定しないが、「ヒト型ロボット」の開発は別問題だ。「ヒト型ロボット」は、使い方を誤るとたいへんな災厄をもたらす。だからいまはまだ、作ってはいけないと思う。

 「ヒト型ロボット」がもたらす、たいへんな災厄とは何か。あえて具体的には示さないが、以下の文章から容易に想像できるだろう。

 小学生高学年程度の人工知能と大人より遥かに優れた身体能力を持ち、完全に指示通りに動く「ヒト型ロボット」があったとしたら、私たちはそれをどんなことに使うだろうか?
 炊事、洗濯、掃除などの家事全般を任せる。親の介護や子守りをさせる。買い物を頼む。そのうちに小学校高学年程度だった「ヒト型ロボット」の人工知能が改良され、ついには東大生レベルの人工知能を持つ高級機種まで出現する。そうなれば、子どもの家庭教師役もロボットに任せることができる。しかも姿形は、ますます本物の人間そっくりになっていく。やがて子どもも大人もこの我慢強く信頼できるロボットを頼りにするようになり……。考えれば考えるほど、頭の中で警告ランプが点滅するのだ。

 技術の進歩は、私たちに便利で快適な暮らしを提供してくれるが、同時に弊害をもたらすことも忘れてはいけない。現実に利益よりもむしろ弊害の方がはるかに多い技術さえ多数存在しているではないか。

 私はこの「ヒト型ロボット」も、いまのままでは必ず人類に災厄をもたらすと確信している。よく考えて欲しい。特殊な事情を持たない人に、人と同じようなことができるロボットが必要だろうか。必要ないと思っていても、便利な道具が開発され多くの人が使いだしたとき、自分だけ使わずにいられるだろうか。人間的に未熟である私は、社会の流れに従わざるを得ず、そのためにどんどん怠惰で無能、ひ弱な人間になっていくに違いない。
 ことによるとこの発明によって人類は、生物として取り返しがつかないほど大きなダメージを受けるかもしれないとまで私は考えている。画期的な技術ほど、良くも悪くも大きな影響力を持つものだ。

 それでも我々は、「ヒト型ロボット」などというものを作っていいのだろうか。